大学公開講座のセカンドアカデミー

【目標】
江戸時代については、近年ではエコ社会、リサイクル社会、隣同士が仲良く暮らす社会、先祖から子孫へ家族を維持していく社会など、好感のイメージで語られることが多くなっていますが、きびしい支配や身分格差の社会として描くドラマ・小説も少なくありません。実際はどういう状態だったのか。時期を分けたりさまざまな問題を取り上げたりしながら、通史として広く理解できるように工夫したいと思います。

【講義概要】
近世の幕開けは、江戸幕府成立よりも、織豊時代あたりから見るのがよいと思います。そこから「幕藩体制」と言われる本体に移っていきますが、その体制の中にも大小の画期があって、時代相が変化していきます。変化を追ったり、立ち止まって仕組みを深く観察したりしながら、明治の幕開けまで話を進めていきます。当時の人々の、行動や考え方に近づくために、毎回、いくつかの「史料」を紹介します。講義は、日本の内側の進み方が柱になりますが、日本の政治や社会の営みが、どういう国際的環境の影響を受けながら進んでいったのかということも見落とさないように、東アジアやヨーロッパとの関係にも触れていくつもりです。また、その時々に現れる人物について、「家」としての盛衰もあわせてとりあげます。

【各回の講義予定】
第1回 2016/ 4/13(水) 下剋上の戦国時代から惣無事の江戸時代へ
第2回 2016/ 4/20(水) 将軍就任直後の徳川家康の「安民」宣言
第3回 2016/ 4/27(水) 天皇・公家と将軍・大名、および寺社の関係
第4回 2016/ 5/11(水) キリスト教禁止と天神仏、誓約方法と救済観念
第5回 2016/ 5/18(水) 東アジア諸王朝とヨーロッパ諸国との国際関係
第6回 2016/ 5/25(水) 村と三都・城下町の請負慣行と民間社会の成長
第7回 2016/ 6/ 1(水) 家綱・綱吉政権期に伸張した文治政治
第8回 2016/ 6/ 8(水) 近世の政治文化と学問・思想の興隆
第9回 2016/ 6/15(水) 労働文化・家事文化と技術・技法の方向
第10回 2016/ 6/22(水) 身分と家格 主従・親子・男女 士農工商
第11回 2016/ 9/28(水) 和風の暮らし 近世的な衣・食・住
第12回 2016/10/ 5(水) 享保の改革 法制化の推進と国産の奨励
第13回 2016/10/12(水) 田沼時代の「積極政策」と社会・災害
第14回 2016/10/19(水) 諸藩の藩政改革と名君・賢宰
第15回 2016/10/26(水) 民間社会の土地集積と民衆の実力行使
第16回 2016/11/ 2(水) 藩校・寺子屋の急増と識字力の高まり
第17回 2016/11/ 9(水) 松平定信の意気込みと寛政の改革
第18回 2016/11/16(水) 「大塩平八郎の乱」と一揆・打ちこわし
第19回 2016/11/30(水) 天保時代の幕政改革・藩政改革
第20回 2016/12/ 7(水) 幕末維新期の内外対応と社会の世直し願望

名前	深谷 克己
肩書き	早稲田大学名誉教授
プロフィール	早稲田大学文学部助手から教授まで歴任。現在、文学学術院名誉教授。専門は日本近世史。教科書執筆に参加。著書に『士農工商の世』(小学館)、『江戸時代』(岩波書店)、『江戸時代の身分願望』(吉川弘文館)、『田沼意次』(山川出版社)、『東アジア法文明圏の中の日本史』(岩波書店、2012年)、『民間社会の天と神仏』(敬文舎、2015年)。