講座詳細情報
申し込み締切日:2012-09-28 / 文学:心理:その他教養 / 学内講座コード:301005
近代文藝の百年―近代文学と京都・奈良・大阪―
- 開催日
- 09/29~12/15(土)
- 講座回数
- 10
- 時間
- 13:00~14:30
- 講座区分
- 後期
- 入学金
- 8,000円
- 受講料
- 23,000円
- 定員
- -
- 補足
※この講座の申し込みは既に締め切りました。
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講座詳細
近代文藝成立から百年余り、その豊饒な文学世界に眼を向けつつ、新しい角度でその遺産を検討して行きます。
今回は昨年好評だった、「文学に描かれた東京」の姉妹編として、京都・奈良・大阪など関西地方を取り上げ、関西の風土がそれぞれの文学者に与えた影響を、具体的な作品を通して考えて行きます。
(企画:中島国彦 早稲田大学教授)
【1】9/29 与謝野晶子と関西―商家の娘から新しい文学の旗手へ―
宗像和重 早稲田大学教授
「やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君」などの大胆な恋愛の歌で知られる『みだれ髪』は、新しい世紀が開幕した1901(明治34)年に、彼女の旧姓「鳳晶子」の名前で出版された。のちに、物議をかもした「君死にたまふことなかれ」で、出征した弟を「堺の街のあきびとの/旧家をほこるあるじにて」と詠んだように、大阪・堺の古い商家の娘として古典に親しんでいた彼女が、新しい文学の旗手として登場する過程を、おもに大阪や京都を舞台として見ていきたい。
【2】10/6 森?外と大阪・奈良―「大塩平八郎」、「奈良五十首」を読む―
山崎一穎 跡見学園女子大学客員教授
〈大阪〉米価は大阪の商人が握っている。大阪町奉行所与力・大塩平八郎は天保の飢饉に際し、米屋と富家を襲撃すべく事を挙げた。?外はこの大塩平八郎の乱を小説化した。?外の執筆動機と小説内の問題点を考究する。
〈奈良〉?外は大正6年12月帝室博物館総長に就任し、奈良の正倉院の開閉封のために出張する。その折々の短歌を「奈良五十首」として詠出した。講義では短歌を鑑賞しつつ、奈良から投函した子供たちへの手紙を読む。
【3】10/13 夏目漱石と京都―『虞美人草』『明暗』などをめぐって―
平岡敏夫 筑波大学名誉教授
漱石は京都を4回訪れている。第1回は、明治25年7月、学生時代に正岡子規と訪れた。このことは第2回、明治40年3月、訪れた時のエッセイである「京に着ける夕」でも回想されている。この第2回は東京朝日新聞連載の『虞美人草』執筆とも関連している。第3回は明治42年10月の満韓の旅からの帰途であり、最後は大正4年3月である。それぞれの京都訪問と作品との関わりをめぐり、語りたいと思う。
【4】10/20 近松秋江と京都「黒髪」―テキストとしての京都―
紅野謙介 日本大学教授
「黒髪」は、私小説作家として知られる近松秋江の代表作であるばかりでなく、谷崎潤一郎、伊藤整、大岡昇平らを感嘆させた短篇小説の傑作である。舞台は京都。よそ者の「私」が京都に迷い、京都にふりまわされていく過程がみごとに描かれている。小説が描き出す空間、土地の記憶を、この短篇を読むことで味わってみたい。
【5】11/10 志賀直哉と京都・奈良―異郷にある文学―
山田俊治 横浜市立大学教授、早稲田大学講師
志賀直哉と関西の関係は、『寺の瓦』に描かれた、明治四一年三月の木下利玄や里見らとの京都、奈良旅行に始まる。そして、その結婚生活の多くの年月を京都と奈良で過ごし、奈良の上高畑には現在も記念館として残る家を新築していた。京都時代を背景とする『暗夜行路』や「山科の記憶」など、志賀文学における関西は重要な地であった。晩年に復刻された『寺の瓦』を始めとして、その関西という場所の意味について考えてみたい。
【6】11/17 吉井勇と京都―『酒ほがひ』から勇の風景表象まで―
中島国彦 早稲田大学教授
「かにかくに祇園はこひし寝(ぬ)るときも枕の下を水のながるる」の歌は誰でも知っているが、この歌を収める歌集『酒ほがひ』(1910年刊)の位置を正しく理解するのは、意外に難しい。晩年京都に住んだ吉井勇だが、京都との関わりは、決して平板では無かった。折々の京都とのつながりに眼を向けつつ、勇が好きだった江戸時代の漢詩人中島棕隠の『鴨東四時雑詞』が描く京都風景との比較もしてみたい。
【7】11/24 宇野浩二と大阪―『清二郎 夢見る子』を中心に―
柳沢孝子 日本橋学館大学教授
宇野浩二は、幼少年期を大阪宗右衛門町に暮らした。宇野の処女出版『清二郎 夢見る子』(大正2年)は大阪での思い出を素材にした、夢幻的、耽美的傾向の強い小品集である。宗右衛門町という特殊な色町の風景、少年の性の目覚め、母との別れ、大阪人気質の今昔、等々。これらの作品をたどることによって、宇野浩二にとっての「原風景」としての「大阪」を読み取ってみたい。
【8】12/1 織田作之助と大阪 「夫婦善哉」―都市と言語を読む―
日高昭二 神奈川大学教授、早稲田大学講師
2007年、幻の原稿「続夫婦善哉」の発見が報道されて、大きな話題となった。化粧品問屋の若旦那と北新地の芸者による「浪花の夫婦愛」の物語が、続編では舞台を九州・別府に移し、また戦時下の時局を色濃く反映していたことも読者を驚かせた。豊田四郎監督による映画化、および文楽としての新作上演などのメディア・ミックス現象にも触れながら、正編・続編をあわせて読みつつ文学における土地・風俗・社会とのかかわりを読んでみる。
【9】12/8 近代女性作家と関西―田辺聖子から津村記久子へ、「働く女たち」を描く語り―
金井景子 早稲田大学教授
この回は、ちょっと時間軸を昭和および平成へとずらして、二人の関西出身の女性作家が描く、「働く女」像を味わってみましょう。幸せを求めて自身のリズムで生きる、どこにでもいる女たちは、どのような語りの中に写し取られているか―田辺聖子の『三十すぎのぼたん雪』と津村記久子の『ポトスライムの舟』を取り上げつつ、相同性と差異について考えて行きます。
【10】12/15 川端康成と京都 「古都」―高度経済成長期日本のノスタルジー―
十重田裕一 早稲田大学教授
「古都」は、1961年10月から62年1月にかけて、『朝日新聞』に連載された川端康成の代表作として知られる。この小説では、出生直後に別れ別れとなった双子の姉妹の再会が、京都の四季の移ろいと風物を背景に描かれている。日本の古都を舞台とするこの小説は、1964年の新幹線開通と東京オリンピック開催という、高度経済成長の象徴的な出来事と少なからず関連している。本講座では、日本の古都を描いた小説と高度経済成長がどのようにかかわるのかを、皆さんとともに考えていくことにしたい。
今回は昨年好評だった、「文学に描かれた東京」の姉妹編として、京都・奈良・大阪など関西地方を取り上げ、関西の風土がそれぞれの文学者に与えた影響を、具体的な作品を通して考えて行きます。
(企画:中島国彦 早稲田大学教授)
【1】9/29 与謝野晶子と関西―商家の娘から新しい文学の旗手へ―
宗像和重 早稲田大学教授
「やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君」などの大胆な恋愛の歌で知られる『みだれ髪』は、新しい世紀が開幕した1901(明治34)年に、彼女の旧姓「鳳晶子」の名前で出版された。のちに、物議をかもした「君死にたまふことなかれ」で、出征した弟を「堺の街のあきびとの/旧家をほこるあるじにて」と詠んだように、大阪・堺の古い商家の娘として古典に親しんでいた彼女が、新しい文学の旗手として登場する過程を、おもに大阪や京都を舞台として見ていきたい。
【2】10/6 森?外と大阪・奈良―「大塩平八郎」、「奈良五十首」を読む―
山崎一穎 跡見学園女子大学客員教授
〈大阪〉米価は大阪の商人が握っている。大阪町奉行所与力・大塩平八郎は天保の飢饉に際し、米屋と富家を襲撃すべく事を挙げた。?外はこの大塩平八郎の乱を小説化した。?外の執筆動機と小説内の問題点を考究する。
〈奈良〉?外は大正6年12月帝室博物館総長に就任し、奈良の正倉院の開閉封のために出張する。その折々の短歌を「奈良五十首」として詠出した。講義では短歌を鑑賞しつつ、奈良から投函した子供たちへの手紙を読む。
【3】10/13 夏目漱石と京都―『虞美人草』『明暗』などをめぐって―
平岡敏夫 筑波大学名誉教授
漱石は京都を4回訪れている。第1回は、明治25年7月、学生時代に正岡子規と訪れた。このことは第2回、明治40年3月、訪れた時のエッセイである「京に着ける夕」でも回想されている。この第2回は東京朝日新聞連載の『虞美人草』執筆とも関連している。第3回は明治42年10月の満韓の旅からの帰途であり、最後は大正4年3月である。それぞれの京都訪問と作品との関わりをめぐり、語りたいと思う。
【4】10/20 近松秋江と京都「黒髪」―テキストとしての京都―
紅野謙介 日本大学教授
「黒髪」は、私小説作家として知られる近松秋江の代表作であるばかりでなく、谷崎潤一郎、伊藤整、大岡昇平らを感嘆させた短篇小説の傑作である。舞台は京都。よそ者の「私」が京都に迷い、京都にふりまわされていく過程がみごとに描かれている。小説が描き出す空間、土地の記憶を、この短篇を読むことで味わってみたい。
【5】11/10 志賀直哉と京都・奈良―異郷にある文学―
山田俊治 横浜市立大学教授、早稲田大学講師
志賀直哉と関西の関係は、『寺の瓦』に描かれた、明治四一年三月の木下利玄や里見らとの京都、奈良旅行に始まる。そして、その結婚生活の多くの年月を京都と奈良で過ごし、奈良の上高畑には現在も記念館として残る家を新築していた。京都時代を背景とする『暗夜行路』や「山科の記憶」など、志賀文学における関西は重要な地であった。晩年に復刻された『寺の瓦』を始めとして、その関西という場所の意味について考えてみたい。
【6】11/17 吉井勇と京都―『酒ほがひ』から勇の風景表象まで―
中島国彦 早稲田大学教授
「かにかくに祇園はこひし寝(ぬ)るときも枕の下を水のながるる」の歌は誰でも知っているが、この歌を収める歌集『酒ほがひ』(1910年刊)の位置を正しく理解するのは、意外に難しい。晩年京都に住んだ吉井勇だが、京都との関わりは、決して平板では無かった。折々の京都とのつながりに眼を向けつつ、勇が好きだった江戸時代の漢詩人中島棕隠の『鴨東四時雑詞』が描く京都風景との比較もしてみたい。
【7】11/24 宇野浩二と大阪―『清二郎 夢見る子』を中心に―
柳沢孝子 日本橋学館大学教授
宇野浩二は、幼少年期を大阪宗右衛門町に暮らした。宇野の処女出版『清二郎 夢見る子』(大正2年)は大阪での思い出を素材にした、夢幻的、耽美的傾向の強い小品集である。宗右衛門町という特殊な色町の風景、少年の性の目覚め、母との別れ、大阪人気質の今昔、等々。これらの作品をたどることによって、宇野浩二にとっての「原風景」としての「大阪」を読み取ってみたい。
【8】12/1 織田作之助と大阪 「夫婦善哉」―都市と言語を読む―
日高昭二 神奈川大学教授、早稲田大学講師
2007年、幻の原稿「続夫婦善哉」の発見が報道されて、大きな話題となった。化粧品問屋の若旦那と北新地の芸者による「浪花の夫婦愛」の物語が、続編では舞台を九州・別府に移し、また戦時下の時局を色濃く反映していたことも読者を驚かせた。豊田四郎監督による映画化、および文楽としての新作上演などのメディア・ミックス現象にも触れながら、正編・続編をあわせて読みつつ文学における土地・風俗・社会とのかかわりを読んでみる。
【9】12/8 近代女性作家と関西―田辺聖子から津村記久子へ、「働く女たち」を描く語り―
金井景子 早稲田大学教授
この回は、ちょっと時間軸を昭和および平成へとずらして、二人の関西出身の女性作家が描く、「働く女」像を味わってみましょう。幸せを求めて自身のリズムで生きる、どこにでもいる女たちは、どのような語りの中に写し取られているか―田辺聖子の『三十すぎのぼたん雪』と津村記久子の『ポトスライムの舟』を取り上げつつ、相同性と差異について考えて行きます。
【10】12/15 川端康成と京都 「古都」―高度経済成長期日本のノスタルジー―
十重田裕一 早稲田大学教授
「古都」は、1961年10月から62年1月にかけて、『朝日新聞』に連載された川端康成の代表作として知られる。この小説では、出生直後に別れ別れとなった双子の姉妹の再会が、京都の四季の移ろいと風物を背景に描かれている。日本の古都を舞台とするこの小説は、1964年の新幹線開通と東京オリンピック開催という、高度経済成長の象徴的な出来事と少なからず関連している。本講座では、日本の古都を描いた小説と高度経済成長がどのようにかかわるのかを、皆さんとともに考えていくことにしたい。
備考
講義で取り上げられている各作品は事前のご一読をお薦めします。
講師陣
名前 | 宗像 和重他 |
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肩書き | - |
プロフィール | - |