大学公開講座のセカンドアカデミー

【目標】
・近代文学の名作を、さまざまな角度から読み込む試みを続けていきます。
・よく知られた名作以外にも、改めて読むと興味深い問題が出てくる隠れた作品にも照明を当てます。
・小説を読む面白さを探究するとともに、文学者の仕事が時代の中でどう拡大していくかにも注意します。

【講義概要】
今年度の春学期には、昭和時代前半(敗戦まで)に書かれた作品のうち、それぞれの作者の個性がはっきりと出ている名作・代表作を扱います。谷崎潤一郎の『蓼喰う虫』(昭和3～4年)は、関西を背景に、谷崎ならではの男と女の複雑な掛け合いが造形されており、新聞連載時の挿絵(小出楢重画)と合わせ読むことでその味わいが増します。岩波文庫は挿絵を全て翻刻しています。最近岩波文庫で新版が出たプロレタリア文学の代表作である徳永直の『太陽のない街』(昭和4年)は、東京の近代化と都市の膨張がもたらす問題性を明らかにしてくれます。太宰治の『お伽草紙』(昭和20年)は、「瘤取り」「浦島さん」「カチカチ山」「舌切雀」の4つの話が見事に造形され、その「語り」の妙味が堪能できます。いずれも文庫本で読めますので、ぜひその文学世界に目を向けてみて下さい。

【各回の講義予定】
第1回 2019/ 4/12(金) 『蓼喰う虫』を読む
第2回 2019/ 4/19(金) 『蓼喰う虫』を読む
第3回 2019/ 4/26(金) 『蓼喰う虫』を読む
第4回 2019/ 5/10(金) 『太陽のない街』を読む
第5回 2019/ 5/17(金) 『太陽のない街』を読む
第6回 2019/ 5/24(金) 『太陽のない街』を読む
第7回 2019/ 5/31(金) 『お伽草紙』を読む
第8回 2019/ 6/ 7(金) 『お伽草紙』を読む
第9回 2019/ 6/14(金) 『お伽草紙』を読む
第10回 2019/ 6/21(金) 『お伽草紙』を読む

【テキスト・参考図書】
テキスト
『お伽草紙（太宰治）』（新潮文庫）（ISBN:978-4101006079）
『蓼喰う虫（谷崎潤一郎）』（岩波文庫）（ISBN:978-4003105511）
『太陽のない街（徳永直）』（岩波文庫）（ISBN:978-4003107911）

※定員の充足状況の変化や、休講・補講等がある場合があります。
お申込の際は、リンク先の主催校のホームページをご確認下さい。

名前	中島 国彦
肩書き	早稲田大学名誉教授
プロフィール	1946年、東京都生まれ。早稲田大学大学院博士課程修了、博士(文学)。公益財団法人日本近代文学館専務理事。日本近代文学専攻。著書『近代文学にみる感受性』(筑摩書房)、『夏目漱石の手紙』(共著、大修館書店)、『漱石の愛した絵はがき』(共編、岩波書店)、『漱石の地図帳』(大修館書店)など。