大学公開講座のセカンドアカデミー

【目標】
現在の地球の大気組成のうち、地球温暖化の元凶とされる二酸化炭素はわずか 0.036 % （360 ppm）です （2013年、ハワイ、マウナロア観測所では400 ppmを記録）。しかし地球が誕生した時点にさかのぼれば、当時の大気のほとんどは（90%以上は）二酸化炭素によって占められていました。そこで本講座では、現在に到るまでの二酸化炭素激減の地球史を理解し、合わせて増加傾向にあるこのガスの人類への影響を考察してみたいと思います。

【講義概要】
近年の異常気象は、地球の温暖化、とりわけ大気中の二酸化炭素の増加による大洋の海水温の上昇に帰せられます。この異常気象は伊豆大島や広島市の集中豪雨を発生させ、あるいは次のような図式、「エルニーニョが発生した年は日本列島では冷夏とその後の暖冬」という従来のパターンをも破壊しているようにみえます。しかし二酸化炭素の大気に占めるその割合は、ほんのわずかです。しかしそのほんのわずかな二酸化炭素の、更にほんのわずかの増加が人類にとっての危機なのですが、実は46 億年前、地球が誕生したばかりの大気には、90 % をはるかに超える大量の二酸化炭素が大気中にあったのです。当時の大気の状況は、現在でも我々地球の兄弟星である金星と火星に残されています。　
ではなぜ、どのようにして大気中の二酸化炭素は激減したのでしょうか? この謎を解き明かすことは、実はなぜ、地球だけが豊富な水に恵まれた惑星となったのか? またなぜ、地球だけが人類が棲める惑星になったのか?という疑問に答えることでもあります。太陽系のみならず、銀河系全体でみても、奇跡としか思えないような水の惑星、地球の歴史を紐解いてみたいと思います。講義は2014年度春学期とほぼ同じ内容です。講義ではテキストを使用しませんが、講義資料集（約80ページ）を第1回目に配布します。スライドも多用します。

【各回の講義予定】
第1回 2015/ 4/ 7(火) 地球型惑星の誕生
第2回 2015/ 4/14(火) 金星と火星の大気組成
第3回 2015/ 4/21(火) 水の働きによる二酸化炭素の減少
第4回 2015/ 4/28(火) ラン藻の出現と縞状鉄鉱床の形成
第5回 2015/ 5/12(火) サンゴ礁と陸上植物の出現
第6回 2015/ 5/19(火) LPTMと白亜紀に起こった地球温暖化
第7回 2015/ 5/26(火) 地球史上のいくつかの大事件
第8回 2015/ 6/ 2(火) ミランコビッチサイクル（繰り返す氷期と間氷期）
第9回 2015/ 6/ 9(火) エルニーニョとラニーニャ（地球の異常気象）
第10回 2015/ 6/16(火) 現在と未来の大気中の二酸化炭素

名前	八木下 晃司
肩書き	岩手大学元教授、放送大学元講師
プロフィール	1985年、トロント大学大学院博士課程修了。Ph.D。専攻は地質学、堆積学、地球史学。学位論文ではカナダ西海岸の中生代白亜紀の地層を研究、帰国後は東北地方太平洋岸の同じく白亜紀の地層の研究に従事。岩手大学元教授、放送大学元講師。主な著作「岩相解析および堆積構造(増補・改訂版)」2011年、古今書院。