大学公開講座のセカンドアカデミー

【講座趣旨】
聖地――そこは神話や信仰や奇跡と結びついた特別の場所です。とはいえ、戦争や大事故や自然災害などによって、強烈な記憶を人々のなかにとどめている場所もまた、人々の心のなかで聖化され、必然的に「聖地」となってゆきます。
人間の「経験」や「記憶」や「願望」が圧縮され、ついに聖性を帯びるにいたった場所、それをも「聖地」とわたしたちは呼ぶことができましょう。
第十三の旅では、世界の「聖地」へとみなさんをご案内しながら、現代のわれわれにとって「聖地」とはなにかを掘り下げて考えていきます。旅、遍歴、聖地巡礼に関心をお持ちのすべての方々のご参加をお待ちしています。

(ルーマニア 五つの修道院から)

【講義概要】
第1回 4月14日(金) オーストリア、ウィーンにて(その1)
ブリューゲルの傑作『バベルの塔』をめぐり、天空を目ざした人間たちの憧憬と欲望を考える。

第2回 4月21日(金) キューバのバラグア(その1)
その町には20世紀の前半600人の日本人がいた。なぜそんな田舎町に日本人が?

第3回 5月19日(金) オーストリア、ウィーンにて(その2)
傑作を見ることの意味について。ブリューゲル絵画を模写し続ける女性画家との対話。

第4回 5月26日(金) ルーマニア 五つの修道院をめぐる(その1)
世界遺産に登録されている特異な修道院群。外壁そのものに聖画が色彩で描かれている。

第5回 6月 2日(金) ルーマニア 五つの修道院をめぐる(その2)
壁画に描かれた聖人たちの黄金伝説をひもとく。

第6回 6月 9日(金) キューバのバラグア(その2)
製糖工場を挟んで日本人地区の反対側には、かつてジャマイカ移民部落があった。

第7回 6月16日(金) ルーマニア ギメシュ渓谷への旅(その1)
ハンガリーとの国境を流れる川のほとりで。復活祭の卵に込められた願い。

第8回 6月30日(金) ルーマニア ギメシュ渓谷への旅(その2)
ドイツとルーマニアの文学とその出会い。カロッサとレブリャーノをめぐって。

第9回 7月 7日(金) ニュージーランドへの旅(その1)
北島。首都ウェリントンにて。ある女性作家がたどった数奇な生涯の旅を考える。

第10回 7月14日(金) ニュージーランドへの旅(その2)
南島。この世の果ての風景。クィーンズタウンからミルフォード・サウンドを訪ねて。

【教材】
・レジュメ資料
・ 越川芳明著『あっけらかんの国キューバ』(猿江商會、2015年)1，800円+税
※教材は各自購入願います。

名前	立野 正裕
肩書き	明治大学文学部教授
プロフィール	福岡県生まれ。岩手県立遠野高校卒業後、明治大学文学部に入学。同大学文学部教員として英米文学と西洋文化史を研究。「道の精神史」を構想し、ヨーロッパへの旅を重ね続ける。著書に『精神のたたかい――非暴力主義の思想と文学』、『黄金の枝を求めて――ヨーロッパ思索の旅』、『世界文学の扉をひらく』(現在三巻まで刊行中)、『日本文学の扉をひらく』(第一巻刊行中)『紀行 失われたものの伝説』、『紀行 星の時間を旅して』、『洞窟の反響』、『未完なるものへの情熱』など。

名前	越川 芳明
肩書き	明治大学文学部教授
プロフィール	1952年千葉県生まれ。筑波大学大学院博士課程文芸・言語研究科単位所得退学。専攻は米文学。90年代後半から、米墨国境地帯のボーダー・ピープルの声「声」と「歌」を聴くために、精力的にフィールドワークを行う。著書に『トウガラシのちいさな旅 ボーダー文化論』、『ギターを抱いた渡り鳥 チカーノ詩礼賛』。訳書にエリクソン『エクスタシーの湖』、『世界の作家32人によるワールドカップ教室』など多数。