大学公開講座のセカンドアカデミー

【講座趣旨】
中国史は「一治一乱」の言葉で表現されるように、上古から現代まで、王朝の興亡や権力の交代が激しく繰り返されてきました。この変転極まりない政治の裏側には、つねに、個性的でしたたかな女たちがうごめき、歴史に彩りと厚みを与えてきました。彼女たちは多くの場合、「美女」であることによって権謀術数の渦巻く政治に弄ばれ、また時代を動かす一つの主役を演じました。本講座ではそうした女性群像を追いかけながら、中国史のもつ奥行きや魅力に迫ります。
ここでいう「美女」とは、単なる外見だけに止めず、内面の美しさ、知的輝き、個性的な言動によって時代に関わった女たちも含みます。時には小説などの世界からも登場してもらいます。一面的な「美女」史・女性史ではない中国史を模索していきます。今期は新たに動き始めた魏晋南北朝の女たちに焦点をあてます。
機会があれば教室を飛び出し、歴史を育んだ現場に踏み出しましょう。具体的には講座のなかで提案させていただきます。


(顧?之・女史箴図)

【講義概要】
第1回 10月 6日(木) 魏晋南北朝時代の女性たちと新たな恋愛の形
後漢の礼教の縛りを脱した魏晋南北朝期、女たちの意識や行動や恋愛観はどう変わるかを概観する。

第2回 10月20日(木) 三国・曹植「洛神賦」の世界から
曹植は魏の文帝(曹丕)の弟で詩人。彼が夢うつつの中で見た洛神?妃(ふくひ)の美しさの背景は。

第3回 10月27日(木) 西晋を生きた羊后と東晋・顧?之『女史箴図』
西晋から五胡への動乱に弄ばれた羊后の生き方、あわせて顧?之『女史箴図』を読み解く。

第4回 11月10日(木) 『世説新語』が語る魏晋の女性と顔之推が『顔氏家訓』に残した南北女性論
魏晋南北朝を代表する二つの書物を手がかりに、発言を始めた女性群像を浮き彫りにする。

第5回 11月17日(木) 南北朝から隋唐をつないだ女性――独孤氏の女たち
北朝末の独孤信の娘たち、その中心に立つ隋の独孤皇后の姿に則天武后の先駆をみる。

【教材】
レジュメ資料


【参考文献】
森鹿三編集『中国文明の歴史4、分裂の時代―魏晋南北朝』(中公文庫、2000年)1，143円+税
張競著『恋の中国文明史』(ちくま学芸文庫、1997年)1，050円+税

名前	氣賀澤 保規
肩書き	元明治大学文学部教授、東アジア石刻文物研究所所長、東洋文庫研究員
プロフィール	博士(文学)。京都大学文学部卒業。同大学院修了。1995年より現職。専門は、中国魏晋南北朝から隋唐時代にかけての政治社会文化史。主著に『府兵制の研究』(同朋舎、明治大学学術奨励賞受賞)、『則天武后』(白帝社)、『中国の歴史12、絢爛たる世界帝国 隋唐時代』(講談社)、『遣隋使がみた風景』(八木書店)「中国中世仏教石刻の研究」(勉誠出版)など。