講座詳細情報
申し込み締切日:2014-05-13 / 世界史 / 学内講座コード:14A1611201
名画で探るヨーロッパ王室史 ワンシーンの背後の歴史的世界
- 開催日
- 5月27日(火)、 6月 3日(火)、 6月10日(火)、 6月17日(火)、 6月24日(火)
- 講座回数
- 5回
- 時間
- 13:00~14:30
- 講座区分
- 前期
- 入学金
- -
- 受講料
- 8,000円
- 定員
- 50
- その他
- 7200(※料金は、神奈川大学生・卒業生等および横浜市交流協議会加盟大学在学生に適用される料金です)
- 補足
※この講座の申し込みは既に締め切りました。
講座詳細
【講座内容】
映画を観ながら、歴史がわかったらもっと面白いのに、と思うことはないだろうか。ソフィア・コッポラの「マリー・アントワネット」(2006)のなかで、マリー・アントワネットは、落ち目になった国王の愛人デユ・バリー夫人から高価な宝石を贈りたいとの申し出を受けるが「ありあまるほど持っていますので」と断る。見逃してしまいそうなほど短い場面には彼女の全体像が写し出されている。この言葉に注視したのはソフィア・コッポラのみ。宝石に興味のない王妃がなぜ「宝石狂い」「国家のお金を宝石に湯水のように使った」と言われ、断頭台に送られたのか。歴史を読み解く鍵は映画のなかの小さな場面に隠されている。それを探ってみよう。
【講座スケジュール】
第1回 5月27日(火) 「わが命つきるとも」(1966、イギリス)
詳細:イギリスを代表する人文学者トマス・モアは長い牢獄生活ののち、法廷で死刑を言い渡されるまで、国王ヘンリー8世の離婚問題・ローマ教皇庁との決別に「沈黙」を守った。モアは「沈黙は有罪に導く根拠とはならず」を身をもって示し、言論の自由への扉を開いた。イギリス最大の名作『ユートピア』を世におくり、イギリス・ルネサンスの文化を花開かせたモアがなぜ処刑されなければならなかったのか。死刑を言い渡されたあとのモアのスピーチに注目してみよう。国家は至高のものなのか、国家の作る法を超越した法が存在するのか。モアはいまもなお問いかけている。
第2回 6月 3日(火) 「ブーリン家の姉妹」(2008、イギリス・アメリカ)
詳細:この映画には、アン・ブーリンが弟のジョージを寝床に誘う場面がある。衝撃を受けた観客も少なくないであろう。史実とはことなるが、窮地に追いこまれたアン・ブーリンの心象風景をあらわしている。アン・ブーリンはキャサリン王妃の座から引きずりおろしたものの、女の子(後のエリザベス1世)しか生めず、王に疎まれ、侍女のキャサリン・ハワードに王妃の座を狙われ窮地に立たされる。アン王妃が打った最後の手は?
第3回 6月10日(火) 「エリザベス」(1998、イギリス)
詳細:イギリス初の女王メアリー1世は、即位するとすぐに異母妹エリザベスをロンドン塔に幽閉した。この映画では、メアリー1世があまりにも醜く理不尽に描かれているので、「なんとかならないのか」との声がカトリック教徒たちから起きた。8200万ドル余りの興行収入をあげ大成功をおさめた映画。なにゆえ、メアリー女王をこれほどの悪役に仕立てたのか。メアリー1世の実像とは?
第4回 6月17日(火) 「エリザベス・ゴールデン・エイジ」(2007、イギリス)
詳細:前作「エリザベス」からほぼ10年後、シエール・カプール監督、ケイト・ブランシェットのコンビで制作された「エリザベス・ゴールデン・エイジ」。監督はインド人、主演女優はニュージーランド人。外国人であるがゆえにイギリス史を柔軟に解釈できた。スペインとの対決に向けて決意を固める女王の苦悩、そして冒険家との愛が切々と描かれているが、いっぽうのスコットランド女王メアリー・スチュアートがなぜ処刑されたのか不明瞭だ。二人の女王の運命を決めたのは何か?
第5回 6月24日(火) 「マリー・アントワネット」(2006、アメリカ)
詳細:フランスのマリー・アントワネット協会の会長が「マリー・アントワネットのイメージを改善しようとしてきた我々の努力が水の泡だ」と酷評した作品。しかし、豪華絢爛なドレスの類を除いて、もっとも歴史に忠実な作品である。マリー・アントワネットが「宝石狂い」ではなかったことが、この映画の2場面からわかる。ファッションショーやお菓子の本を見る目ではなく、淡々と描写された映像から浮かびあがる王妃の内面の世界に注目したい。映画の舞台となったヴェルサイユ宮殿が実に美しい。
映画を観ながら、歴史がわかったらもっと面白いのに、と思うことはないだろうか。ソフィア・コッポラの「マリー・アントワネット」(2006)のなかで、マリー・アントワネットは、落ち目になった国王の愛人デユ・バリー夫人から高価な宝石を贈りたいとの申し出を受けるが「ありあまるほど持っていますので」と断る。見逃してしまいそうなほど短い場面には彼女の全体像が写し出されている。この言葉に注視したのはソフィア・コッポラのみ。宝石に興味のない王妃がなぜ「宝石狂い」「国家のお金を宝石に湯水のように使った」と言われ、断頭台に送られたのか。歴史を読み解く鍵は映画のなかの小さな場面に隠されている。それを探ってみよう。
【講座スケジュール】
第1回 5月27日(火) 「わが命つきるとも」(1966、イギリス)
詳細:イギリスを代表する人文学者トマス・モアは長い牢獄生活ののち、法廷で死刑を言い渡されるまで、国王ヘンリー8世の離婚問題・ローマ教皇庁との決別に「沈黙」を守った。モアは「沈黙は有罪に導く根拠とはならず」を身をもって示し、言論の自由への扉を開いた。イギリス最大の名作『ユートピア』を世におくり、イギリス・ルネサンスの文化を花開かせたモアがなぜ処刑されなければならなかったのか。死刑を言い渡されたあとのモアのスピーチに注目してみよう。国家は至高のものなのか、国家の作る法を超越した法が存在するのか。モアはいまもなお問いかけている。
第2回 6月 3日(火) 「ブーリン家の姉妹」(2008、イギリス・アメリカ)
詳細:この映画には、アン・ブーリンが弟のジョージを寝床に誘う場面がある。衝撃を受けた観客も少なくないであろう。史実とはことなるが、窮地に追いこまれたアン・ブーリンの心象風景をあらわしている。アン・ブーリンはキャサリン王妃の座から引きずりおろしたものの、女の子(後のエリザベス1世)しか生めず、王に疎まれ、侍女のキャサリン・ハワードに王妃の座を狙われ窮地に立たされる。アン王妃が打った最後の手は?
第3回 6月10日(火) 「エリザベス」(1998、イギリス)
詳細:イギリス初の女王メアリー1世は、即位するとすぐに異母妹エリザベスをロンドン塔に幽閉した。この映画では、メアリー1世があまりにも醜く理不尽に描かれているので、「なんとかならないのか」との声がカトリック教徒たちから起きた。8200万ドル余りの興行収入をあげ大成功をおさめた映画。なにゆえ、メアリー女王をこれほどの悪役に仕立てたのか。メアリー1世の実像とは?
第4回 6月17日(火) 「エリザベス・ゴールデン・エイジ」(2007、イギリス)
詳細:前作「エリザベス」からほぼ10年後、シエール・カプール監督、ケイト・ブランシェットのコンビで制作された「エリザベス・ゴールデン・エイジ」。監督はインド人、主演女優はニュージーランド人。外国人であるがゆえにイギリス史を柔軟に解釈できた。スペインとの対決に向けて決意を固める女王の苦悩、そして冒険家との愛が切々と描かれているが、いっぽうのスコットランド女王メアリー・スチュアートがなぜ処刑されたのか不明瞭だ。二人の女王の運命を決めたのは何か?
第5回 6月24日(火) 「マリー・アントワネット」(2006、アメリカ)
詳細:フランスのマリー・アントワネット協会の会長が「マリー・アントワネットのイメージを改善しようとしてきた我々の努力が水の泡だ」と酷評した作品。しかし、豪華絢爛なドレスの類を除いて、もっとも歴史に忠実な作品である。マリー・アントワネットが「宝石狂い」ではなかったことが、この映画の2場面からわかる。ファッションショーやお菓子の本を見る目ではなく、淡々と描写された映像から浮かびあがる王妃の内面の世界に注目したい。映画の舞台となったヴェルサイユ宮殿が実に美しい。
講師陣
名前 | 石井 美樹子 |
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肩書き | 神奈川大学名誉教授 |
プロフィール | 1974~78年英国ケンブリッジ大学大学院にて中世英文学を専攻。文学博士。その後ケンブリッジ大学東洋学部専任講師、静岡大学教授を経て2013年3月まで神奈川大学外国語学部教授。専門は中世・ルネサンスのイギリス文学・歴史。主要著書に『聖母のルネサンス』(岩波書店)、『エリザベス――華麗なる孤独』(中央公論新社)、『ヨーロッパの王妃』『ヨーロッパ宮廷の愛人たち』『マリー・アントワネットの宮廷画家――ルイーズ・ヴィジェ・ルブランの生涯』(以上、河出書房新社)ほか多数。『マリー・アントワネット――ファッションで世界を変えた王妃』刊行予定。 |