大学公開講座・大学通信教育課程 受講体験記
「◇英語で学ぶ無料公開講座◇ 能の晴代 ~能という芸術への誘い~」
- 期間 : 2013年3月27日
- おすすめ度 : ☆☆☆☆☆
- ニックネーム : ひとみ さん
- 年代 : 40代
- 職業 : その他(アーティスト)
- 都道府県 : 千葉県
異国人に学ぶ日本
私は、16年ほどのアメ リカ生活を経て、2012年5月に帰国しました。アメリカでの最後の4年間は、ネイティブアメリカンのコミュニティーと接点を持ち、彼らの教えやクラフトを実生活の中から学ばせていただきました。
以前から興味があった世界でしたが、彼らの価値観や精神学に惹かれていき、夢中で学びました。そして、いつか日本で自らの学んだことを伝えるチャンスがあればと思うようになったのです。
ただ、母国に戻った時点でのプランはありませんでした。そして、「いくら学んだとはいえ、異国の文化を伝えることが果たして出来るのか、してもいいものなのか・・・」と悩みました。その気持ちの裏には「wannabe(※)」呼ばわりされた経験の悔しさと、その血を持たぬものは所詮「wannabe」でしかないという諦めもありました。
そんな苦悩の白々、国際人の端くれでありながら、自国文化すら知らないことへの恥ずかしさもあり、少しずつ見聞きするうちに「能楽」に惹かれ、詳しく知りたいと思いました。
その時に、ジョン・オーグラヴィー氏の能楽についての公開講座を見つけましたが、「何故、日本に居ながらアメリカ人に能楽を教わる必要があるの?」と、そんな疑問も持ちながらの受講でした。
教壇に立つオーグラヴィー氏は長袴姿で、彼の前には能面や鼓が置かれました。その丁寧な扱いぶりに、まず心を動かされました。そして氏のお話は、能への尊敬の念と愛情が充分に伝わるものでした。
お話の中には、スピリットやエネルギーやパワーというような説明が多く出てきます。地球と繋がり一体となる舞台。それを言葉のみでなく、自ら披露された舞と唄から体感させてくださいました。氏のパフォーマンスには、確かに日本人の魂が入っていたのです。
ここまで日本の文化を愛してくださる異国人が居ることに、それを日本人の私達に伝えてくださることに、感謝の気持ちでいっぱいになりました。異国人が日本の文化を伝えることを疑問視していた自分が恥ずかしくなります。
オーグラヴィー氏は、日本人とは違った視点も持ちながら、より深く能楽について教えてくださったように感じます。
この講座の受講をきっかけに、私の進むべき道も見えてきました。そして一週間後、私は、日本で初出展したワークショップで、ネイティブアメリカンの教えとクラフトを人々に伝えていました。夢を叶える第一歩を踏み出したのです。
その後も、歩みはゆっくりですが、順調に目標へと向かっています。皆さんが、私の話を目を輝かせて聴いてくださったり、クラフト体験でとびきりの笑顔を見せてくださったり、そんな幸せな活動をさせていただいています。
もちろん、ネイティブアメリカンの文化にも踊りや唄がありますので、それらを紹介する機会には、氏の自信に満ちたパフォーマンスを思い出しながら、私も踊り唄います。そして「ネイティブアメリカンの魂」が伝わると言っていただけるようになりました。
(※)編集部注
wannabeは、「want to be ~」(~になりたい)から派生したスラングで、「~になりたい(がなれない)人」「~気取り」といったネガティブな語感があります。
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