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遊学モニターレポート No.17

新丸ビルというオフィス街で学ぶ「農業講座」が面白い
丸の内朝大学とは?
丸の内朝大学(http://www.asa-univ.jp/)は、2006年からスタートしたイベント 朝EXPO in Marunouchi(ヨガや落語など1回のセミナーを受講できる朝を活用するイベント)が、より深く学べるかたちで開講した市民講座です。それぞれのテーマで1回程度(全日程で5日)の受講だった朝EXPOの受講者から、「連続講座を受講してみたい」という声が多かったということもあり、開講したのが朝大学。運営企画は朝EXPO in Marunouchi 実行委員会で、三菱地所株式会社が特別協賛のかたちでサポートし運営されています。
丸の内朝大学は、この4月に5講座からスタートしました。
当社主催公開講座でも、講師をしていただいたディレクターの井上さん(http://biz.second-academy.com/seminar/index_02.html)によると、「以前から連続講座で開講して欲しいと要望が多く、実際に開講してみるとたくさんの方に受講いただけました。朝の講座ということが集客面でマイナスであるとは一切考えていませんでした」とのことです。実際に本日の講座も30名ほど参加されていました。
他の講座も多くの方が参加されているそうです。会場は新丸ビルのエコッツェリア(http://ecozzeria.jp/)で、雰囲気良く受講することができました。
農業クラス~食の基本は農にあり~
宮治勇輔さん 「農業クラス~食の基本は農にあり~」講座は、新聞や雑誌でも有名な農業プロデューサーである宮治勇輔さんを中心に、農家のこせがれネットワークという組織の若手農家による講座です。食や農業に関心のある意識の高いビジネスパーソンやOLのための講座です。

毎回ゲストである若手農家を招き、ご自身の活動の紹介や、それぞれの専門分野の内容が講義の中心です。また、実際に田植えを体験したり、農場でのバーベキューをしたりなどのフィールドワークもある楽しい講座です。

今回のレポートは、この講座の第2回目で、久松農園の久松達央さんhttp://kazedayori107.seesaa.net/)による「本当に有機がいいの?有機農家さんに聞いてみよう」です。久松さんの活動のご紹介など、大変面白い内容でした。朝7:30から約30名の受講者(男性、女性が半々)が出席され、大変活況な講座でした。

茨城県ご出身の久松さんは、4年半ほど大企業で勤め、大阪に暮らしていた際に田舎暮らし農業に関心を持たれたようです。以前から環境問題に関心があったこともあり、運が悪く(笑)有機農業に出会い、有機農業にのめり込んだそうです。
まずは、茨城の農業法人で1年間研修した後、土地をかりて農業を始めました。現在では、畑250アール、年間40から50品目の野菜を作っているそうです。販売先は、全て直販で、通信販売で販売したり、東京のレストラン等に納品したりしているそうです。

久松さんの講義詳細:有機農業について
久松さんの講義
有機農業というと、農薬を使っていない農業というイメージがありましたが、久松さんによると「有機農業=生き物の仕組みを利用した農業」とのことです。「肥料の吸収に微生物を利用する」、「生物の多様性で病気・虫を抑える」というように農業生産に生き物の力が介在しているのが有機農業らしいのです。

久松さんは、「有機農業に関する3つの神話」についても紹介されていました。

【有機農業に関する3つの神話】
  巷のイメージ  久松さん見解
有機農産物は安全 現在は残留農薬の毒性のリスクは極めて小さい
・理由:農薬の基準が厳しい、自然に分解するなど。それよりも、畑の生物が死んでしまうことが問題

有機で作ると美味しい 野菜の味を決めるのは品種と時(時期・鮮度)が8割で、残りの2割は元気に育っているか(有機の範囲)である
・有機野菜が美味しい理由
有機農業では健康な個体しか生き残れないから、結果的に美味しいものになるとのこと。だから、良い野菜をたくさん育てるには、多く野菜を育てて、贅沢にたくさん捨てているそうです。しかし、近所のおばさんに「薬をかけないんじゃ、捨てちゃうことになって野菜が可哀想だよ」と言われて、いろいろと考えることもあるそうです。

有機農業は環境に優しい 有機農業は生き物のあり方を豊かになるので、そういう意味では環境に優しい
・農業に必要となる環境を守るため、川を汚さないとか、生産を邪魔しないようにしたいとのことです。
なぜ有機農業なのか?
久松さんは、安全な野菜ではなく、「健康な野菜」を作りたいということで有機農業の道に進まれました。1985年と2000年の同じ品種の野菜を比較すると、同じ野菜で栄養価が落ちているそうなんです。その理由は、「味や栄養を軽視した品種改良(流通のしやすさ、作りやすさ、見栄え)」、「適地・適期栽培の放棄」、「広域流通による鮮度低下」、「土壌そのものの劣化」によってだそうです。やはり味も落ちているそうです。久松さんは、作物を美味しく健康に育てる近道として有機農業を選択されました。

久松さんが目指すものは、「滋味のある野菜」。講座では、実際に久松さんの畑で採れた冬人参ジュースを飲ませてもらいましたが、何か懐かしい味でとても美味しかったです。
ただし、久松さんは農薬をなるべく利用せずに、ネットを張って害虫から守っているため、ネットの中に進入した害虫によってキャベツを何千個と廃棄したことがあるなど苦労も多いそうです。  また、多品目栽培・混植(ある種の病気・虫を増やさない)をコンセプトにしているとのこと。面白かったのが、キャベツの横にセロリを植えると、キャベツが好きな紋白蝶はセロリの臭いが嫌いなためにキャベツを守ることができる、などの対策をしているようです。

籠の野菜
色々な野菜を作る結果、色々な野菜ができるため、畑を丸ごと食べてもらうというように通信販売で販売する野菜はセット販売です。健康な野菜を作るために、多くの野菜を廃棄してしまうことになるため、どうしてもコストが高くなり売価が高くなるといったこともあるようです。この話を聞くと、価格が高くて当たり前かな、と思うようになりました。
また、受講者からの質問では、ビジネスパーソンが多いために、「初期投資はどのぐらいでしたか?」、「販売方法はどうされていますか?」といったような質問が挙っていました。みなさん、自分の仕事にも生かそうとされているのかもしれません。

最後に
久松さんと 私も例に漏れず有機農業=無農薬野菜というイメージだったのですが、有機野菜 =「健康で美味しい野菜」ということを知ることができました。普段何気なく食 べている野菜ですが、これからはもっともっと野菜について調べて食べようと思 いました。生の野菜は美味しいですもんね。
新丸ビル=オシャレなオフィスビルというイメージで、「農業」のイメージとな かなか結びつかなかったのですが、受講してみると「若手農家による農業」=オシャレな農業という印象に変わり、丸の内朝大学にピッタリの講座でした。
受講者インタビュー
インタビュー女性 湘南にあるイベントスペースで、みやじ豚さんの豚肉や地元の野菜を使った料理イベントを企画しています。もっと「美味しい野菜」について知りたいと思いこの講座 に参加しました。受講してみると、野菜について知らないことも多 く、純粋に興味深く講師の話を聞くことができます。朝早い講座で すが、仕事のアポイントともかぶらず受講しやすいですね。実は今日は締め切りがあって、ほぼ徹夜状態での参加でしたが、来て良 かったです。講義内容もユニークで為になります。最後のバーベ キューも楽しみにしています。

<ライター、イベントスペースプランナー>


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